くじゅう夢大つり橋とは、歩行者専用としては日本一の高さを誇るつり橋である。
こんな高さから落ちたら、人命などひとたまりもありません。
忘れもしない、ここに訪れたのは3月の早朝でした。
冬のもやが立ち込め、地平の視界は効かないが空だけは突き刺すように透き通り、粉雪が舞い、地には雪が積もる幻想的な光景。
そんな日柄に、朝一番、くじゅう連山のふもとにあるタデ原湿原を散歩し、湿原の麓にある長者原ビジターセンターへ立ち寄り観光情報を求めた。
そのビジターセンターには管理人のおばちゃんがいて、言われた一言が刺さった。
「おお、頭まで雪で真っ白に染まっておるな。そう、おぬしが山と共にあるように。」
ナウシカに出てくる大ババ様みたいなテンションと声で、センター入場後開口一番でこのセリフを吐かれた。
「こんなアニメみたいなセリフを自然に出せるのおばちゃんすげえな」と思いつつも、自然と一体になりたい自分を肯定されたようで、とてもうれしいセリフだった。
その後、近所にあるくじゅう大つり橋の観光資料をもらい、1人車に戻った。
頭の中でおばちゃんのセリフが何度もリフレインし、運転しながらなんだか涙が止まらなくなった。前の視界は霞み、運転中なので普通に危ない。
タデ湿原から走ること数分。くじゅう夢大つり橋に到着。
つり橋の券売所にて。
「大人いぢまい、おねがいじまず」
涙声で、涙はボロボロこぼれたのまま。
券売所の兄ちゃん、顔が引きつっていたのが分った。
朝の誰もいない時間帯に一人っきりでつり橋に向かう大学生。
このつり橋の高さは173メートル。落ちたら助からない。
傍から見て「観光目的ではない」と解釈されるのは当然のことだったはず。
つり橋に向かう僕。つり橋中央に到着すると、谷底には深い霧がたち込めてひたすら美しい風景が広がっており、もう一度ビジターセンターのおばちゃんの言葉を反芻し、素晴らしい感動の余韻をかみしめた。
満足してふり返ると、後ろには、多分事務所で待機していたであろうスタッフまで男性3人出張ってきて、こっちをガン見している。
感動で周囲が見えていなかったが、自分がどんな勘違いをされていたのかにやっと気づいた。
(イヤ、自〇希望者じゃないっす。紛らわしくてすまん。)
くじゅう夢つり橋は、そんな暖かで心配性なスタッフが在籍している絶景スポット。アニメみたいなセリフを吐くおばちゃんがいる、「タデ原湿原」は、つり橋から車で10分。
つり橋は入場に大人500円かかりますが、超おすすめの観光名所です。湿原は無料。
阿蘇来たら遊びに行ってね。
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