千葉 海中電柱 久津間海岸

千葉県木更津市にある久津間海岸では、今もなお「海中電柱」と呼ばれる独特の風景が残っています。

かつては隣の江川海岸にも同様の光景があり、江川海岸が本家で久津間海岸の海中電柱はおまけという認識でしたが、江川の電柱は2019年に撤去され、現在この幻想的な風景を間近で見ることができるのは久津間の方のみとなりました。

浅瀬の干潟に並ぶ電柱群は、潮が満ちるとまるで海の中を突き進むかのように立ち並び、他に類を見ない静謐な景観をつくり出します。特に夕暮れ時には、空の赤に染まりながら水面に影を落とす姿が、どこか終末的な雰囲気をまとい、観る者に静かな衝撃を与えます。

「映える」「SNS映え」といった表面的な言葉では語り尽くせない、無人の構造物が語る時間の経過と人の営みの痕跡。その寂寥とした美しさは、いわば人工物で構成された“静かな風景画”ともいえます。

アクセスは決して良いとは言えませんが、その不便さこそがこの場所の静けさを保っている要因のひとつかもしれません。人の気配が消えたような夕暮れの海辺に佇むと、世界から切り離されたような感覚に包まれます。

久津間海岸の海中電柱は、時代が変わっても消えずに立ち尽くす記憶の遺構のような存在です。誰にも邪魔されずに静かな時を過ごしたいとき、ふと足を運びたくなるような、そんな不思議な引力を持っています。

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