義務教育のころまでは、クラスメイトとの交流や部活動を通じて、運がよければある程度「漫画のような」恋愛やドキドキする展開を経験することもあるでしょう。
しかし、社会に出ると現実は一変します。味気なく、厳しく、辛い日々が続き、かつて憧れた夢のような物語とはほど遠い現実を突き付けられます。
さらに、子供のころ「つまらない」と感じた野原家や磯野家の生活ですら、今では多くの人にとって手の届かない水準となり、理想と現実のギャップに幻滅する人が増えているのです。
こうしたギャップが、結婚や家庭を築く気持ちを薄れさせる一因となっているのは自然なことです。
この背景にはフィクションの影響力が深く関係しています。漫画やアニメが与える理想像を軽視してはいけません。
かつての日本では、「のらくろ」が軍国主義を促進するプロパガンダとして活用され、アメリカでも「ミッキーマウス」が愛国心を煽る目的で用いられました。
少年たちはこうした作品を通じて理想を抱き、その回答として「赤紙」による招集を喜ばしいものと受け入れるケースもありました。当時はそれが夢見た世界への「招待状」として機能していたからです。
現代において、若者たちが憧れる理想に対して具体的な道筋にあたるものは先輩社会人から一切提示されません。漫画やアニメが政府主導で描かれたわけでは無いので、行政からしたら勝手な子供の夢想に付き合う理由は無い。
なのですが・・・日本は世界トップのフィクションコンテンツ大国です。
「諸刃の剣」であるフィクションの影響力を、行政は自覚しきれていないのでしょう。
理想の恋愛や人生を実現するための現実的な道筋がないため、理想の結婚恋愛観とのギャップが埋められなかったという事実が心のキズになり、恋愛や結婚を回避する傾向が強まっていると思います。
私が提案したいのは、「現実はそうならんから漫画を読むな」ということではありません。
むしろ、現実を設計する立場にいるフィクションと無縁のエリートたちこそフィクションを読み、平凡な人々が抱く理想像と、その理想と現実のギャップに感情移入をするべきだと思います。
理想を否定するのではなく、現実を理想に少しでも近づけるための仕組みを模索することが、未来の社会に必要な視点ではないでしょうか。
もちろん高い税負担の問題なども解消しなくてはいけませんが、心理的な未婚理由を解決する糸口は、こんなところに転がっているのではないかと考えます。
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